
BORDER5 を築4 年で最速認定。更に 3 制度同時認定の注⽬事例。〜ザ・パークハ ウス本厚⽊タワーの取り組み〜マンション管 理の質を可視化する
BORDER5を竣⼯後 4 年と全国最速で認定されたザ・パークハウス本厚⽊タワー。更に管理計画認定制度・管理適正評価制度も同時認定され、「三冠達成」という稀有な実績も残しています。
このコラムでは、前後編2回にわけて、その舞台裏と実践プロセスを桃井理事⻑に聞きます。本事例は、タワーマンションに限らず、評価項⽬の可視化と組織設計によって多くの管理組合で応⽤可能なプロセスで⾒本となるものです。
ザ・パークハウス本厚⽊タワーの概要
應⽥: 本⽇はお時間をいただき、ありがとうございます。まず、このマンションの概要についてご紹介いただけますでしょうか。
桃井: こちらこそよろしくお願いいたします。このマンションはザ・パークハウス本厚⽊タワーと称し、総⼾数は 163 ⼾、地上 22 階建て地下2階の構造です。築年数は2021年 2 ⽉竣⼯ですので、現在築 5 年⽬となります。所在地は神奈川県厚⽊市に位置しております。
應⽥: BORDER5の取得を築 4 年で達成されたのは、全国で最速の記録だと伺っています。また、管理計画認定制度と管理適正評価制度も併せて認定された点が特筆されます。
このような成果の背景について、詳しくお聞かせいただけますか。
桃井: BORDER5に加え、管理計画認定制度と管理適正評価制度の 3 つを築 4 年で認定いただくことができました。これらの制度は、評価項⽬がホームページで公開されていますので、それを徹底的に分析し、達成可能な項⽬から優先的に取り組んだことが鍵でした。新築時点で管理の基盤が良好であった点、管理会社である三菱地所コミュニティの専⾨的かつサポートも大きな要因です。私は評価項⽬を⼀つずつ洗い出し、未達成のものを分類し、継続的な更新が必要なものと⼀時的なものを分けてクリアしていきました。
應⽥: BORDER5の特徴として、点数の半分がコミュニティ形成や防災対策に割り振られているため、⼈的な協⼒が不可⽋です。理事⻑⼀⼈では限界があるはずですが、理事会の構成やアクティブな運営のコツについてお聞かせください。
桃井: 理事は監事を含めて10 名です。専⾨委員会を 4 つ設置し、防災安全委員会、企画運営委員会、⻑期修繕委員会(旧:経費最適委員会)、資産運⽤委員会と分けました。これらはBORDER5の評価項⽬にほぼ対応する形です。初期段階では私が委員⻑を兼任し、全体の 8 割を主導し、管理会社の防災訓練サポートや外部業者のイベント運営⽀援を活⽤しました。当初は私が主導しましたが、次第に体制化できました。現在は委員がのべ 14 名まで増え、兼任しながらも各委員会が機能しています。

管理良好なマンションになる秘訣
應⽥: 仕事の分担が効率化のポイントですね。委員会の設置により、例えば防災やコミュニティの項⽬を並⾏して進められたのでしょう。認定制度の取得順序についてですが、通常は評価制度から始めるマンションが多い中、認定制度から着⼿されたのは珍しいパターンです。その経緯をお聞かせください。
桃井: 2022 年 6 ⽉の理事会で管理計画認定制度の認定に向けて既に取り組んでおり、築4年⽬で私が⼊ったタイミングで管理会社から管理適正評価制度の提案がありました。そこでBORDER5も視野に⼊れ、並⾏して進めました。築浅のため書類が揃っており、早期取得の利点を⽣かせました。
應⽥: 積⽴⾦の改定は、制度で最もハードルの⾼い部分です。特に中規模マンションで商業施設を併設する場合、値上げの合意形成が難航しがちですが、どのように進められたのでしょうか。初期額から現在の額への推移と、住⺠や理事会の説得プロセスについて詳しくお聞かせください。
桃井: 修繕積⽴⾦を現⾏の 120 円から 416 円へ引き上げる議案を総会に提出予定です。値上げ幅は約3.5倍ですが、住⺠説明会を住宅側2 回、全体側 2 回の計 4 回実施し、反対意⾒はゼロでした。築5 年時点としては極めて早い決断です。理事会を毎⽉ 1 回、更に 4 つの専⾨委員会を同⽇開催する体制で、60回実施することでスピードを確保しました。
均等積み⽴て⽅式の導⼊にあたっては、説明会でグラフを⽤いて段階増額積⽴⽅式との⽐較を⽰してメリットを明確にし、多数決で合意を得ました。また、厚⽊市の無料マンション管理⼠派遣制度を利⽤してセカンドオピニオンを取得し、計画の適正さを確認しました。⻑周期化の検討は後回しにし、まず均等積⽴の導⼊を優先しました。
應⽥: 築 5 年⽬というタイミングが、均等積⽴への移⾏に適していたのでしょう。⽀出と収⼊の⾒直しも重要ですが、具体的な実績としてどのような取り組みをされたのですか。
桃井: ⽀出⾯では、電気料⾦の⾼騰対策として削減システムを導⼊し、保険を5 年⻑期契約に切り替えて管理費を抑制しました。収⼊⾯では、マンションすまい・る債の活⽤のほか、駐⾞場を満⾞化し、⼤幅⿊字を達成しました。また、消防法に基づく防災訓練を年 2 回実施し、イベントとして七⼣、ハロウィン、クリスマス、花⽕⼤会屋上縁⽇を開催。花⽕⼤会屋上縁⽇では屋上に 250 名を超える⽅が参加し、住⺠の組合活動への理解を深めました。これらの活動が、修繕積⽴⾦改定の基盤となりました。
應⽥: 理事会運営の⼯夫として、エグゼクティブサマリーの活⽤をお聞きしましたが、詳細をお聞かせください。
桃井: A4⽤紙1 枚に議案の概要、決議事項、⼼配事、メリット等をまとめ、理事会1 ヶ⽉前に紙で配布します。これにより理解が促進され、審議がスムーズとなります。また、議案の妥当性は撮影して、それをAIに解析させることで簡易に確認できますので、うまく賛成の流れを作れました。補⾜資料は 100 枚を超えることもありますが、議案書⾃体は1 枚で判断可能にしています。

さらなるマンション管理向上を目指すためのロードマップ
應⽥: 極めてスピーディな達成のもう⼀つの秘訣として、どのような点が挙げられますか。
桃井: 初期は私が主導し、他の理事の負担を極⼒抑える形をとりました。実績が信頼を⽣み、仲間が増えました。また、RJC48 (マンション管理組合理事⻑勉強会)の知⾒やさくら事務所の YouTube、失敗事例を参考に、同じミスを避けました。特に失敗談は、住⺠理解を得るための進め⽅を学べる貴重な資源です。
應⽥: 住⺠説明会の⼯夫はどのようなものでしたか。
桃井: 合計 4 回の説明会に加え、YouTube で解説動画を作成し限定公開。予習・復習を可能な環境を整えることで、住民の理解度を高めました。総⼾数163 ⼾に対し、説明会参加者は 60 名程度と多く、 全住民に関係する修繕積立金への関心は非常に高かったようです。グラフを活⽤し、計画と徴収額の関係を明確に説明しました。
應⽥: 理事会の1年間の目標と進捗を確認するためのロードマップの活用も鍵ですね。具体的にどのように。
桃井: 今期の約 20 項⽬を最初に提⽰し、前半に重い、後半に軽い議題を配置し、実績をベースに信用を積み上げました。理事任期の前半は一人で進め、他の理事の負担を最小限に抑えました。楽しさを重視し、イベント経験を活かしました。
應⽥: 特に1期⽬など1年12回の理事会でも総会などの⽬標期⽇から逆算してどこまで進んでいなけえばならないかの⽬標が1ページで可視化されていてすばらしいです。とくに凡庸な議論を避ける⽅法は?
桃井: ⼤原則として各専⾨委員会で事前審議。理事会は承認中⼼にし、効率化を図りました。1 回の理事会で約15 議案を処理し、1議案あたり約5 分以内で決議するペースを維持しました。
應⽥: 広報の⼯夫をお聞かせください。
桃井: 掲⽰板、デジタルサイネージ、ホームページの 3 媒体で情報を発信。住⺠との接点を増やし、信頼を築きました。⾃作サイネージで広告を排除し、ストレートに伝える⼯夫をしました。信⽤残⾼を⾼めることが、議案通過の基盤です。これらの取り組みは管理会社と住⺠の協⼒なくしては成し得ませんでした。将来的にも、この体制を維持し、マンションの価値向上を⽬指したいです。

まとめ
ザ・パークハウス本厚⽊タワーの最速認定は、偶然でも特別待遇でもない。評価項⽬を読み解き、組織と情報を設計し、信⽤を積み上げるという、極めて地道なプロセスの結果である。この考え⽅は、築年数や規模を問わず応⽤可能だ。