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専門委員会の功罪(後編)

普通の規約だと委員会は「理事会に具申する」だけ。諮問と答申で往復のオーバーヘッドがあるからそこに関わる人の負荷は必ず増えるわけだからなしですむなら、ないにこしたことはない「必要悪」です。

 

ないにこしたことはないけど、設置する場合には、

[1] 理事が分かれて入る“分科会”的パターンと

[2] 非理事の委員が中心でテーマに分かれた”諮問委員会”的パターン

があって、おのおの良し悪しもあるまでが前回。

前編はこちらで読めます → https://www.border5.com/column/803/

 

後編はその続き。実際に事例をX(旧 Twitter)で集めてみました。

理事会の規模別の専門委員会の数

大和ライフが受託マンション4千棟で総会議案になってる例を調査すると専門委員会に関わる総会議案の6割が修繕委員会です。

→ 修繕委員会等の専門委員会の設置に関する調査

 

小規模マンションでも1つだけは委員会ありって事例も多いかなで、役員数15人以上と15人未満にわけて委員会の数を訊いてみた結果がこちら。
 

理事会の規模別の専門委員会の数

 

 小規模理事会では2つ以上委員会のある割合が2割なのに対して、大規模では5割。戸数が少ない(50未満など)組合では理事会が毎月は開催していない例も多くて、”理事会だけでは終わらない”から委員会も上げてるのだと理事数~戸数規模で委員会が増える傾向は納得です。

 

大規模でも、委員会なしで済ませている割合は4割近い一方で(私がやってる理事長の会RJC48でも委員会不要を唱える大規模タワーの理事長さんとか多くて体感に近い)、一旦専門委員会を作るとなるとやけに沢山作りがちな傾向ははっきり見えます。

 

3つ以上だけ部門でさらに聞いてみたらなお6つ以上が最大。案外副理事長以上のみが出席を許される「常任委員会」みたいなもので、理事会資料の事前審議や筋悪提案(?)への事前対応などを審議している組合も大規模では2割ほどあって、以下は7つ委員会のある実際の事例:

① 常任委員会 ② 防災委員会 ③ 緑化委員会 ④ ペット委員会 ⑤  総務委員会  ⑥

日常修繕委員会  ⑦ 大規模修繕委員会

この例だと規約や細則改定は総務委員会を事前に通さないと理事会に付議できないとか。

ここまで委員会が増えて複雑化が進んでいると、理事数が15人いても理事会とは別に2つくらい会議にでないといけないで、理事だけで回すのは無理がでてくるので、多分広く委員を住民に募集した「諮問委員会」的設定になっているんだと思いますが、私は前編のように30人いる理事を ①  ソフト ②ハード ③防災防犯 ④コミュニティの4委員会に分けていても多すぎるとおもっていたので、理事は体もつのかなとか思っちゃいます。

 

私の組合では理事が理事会の他に複数の委員会にでることはなく、理事長は委員長を兼ねてはならない(必ず副理事長が委員長です)ので出席義務のある会議は理事長でも月に最大で2つ。リタイヤ済のお爺さんがやるならともかく現役世代の人を週末に呼びつけて会議参加の義務を負わせるなら2時間以内程度でさくっと終わる会議が月2回が負荷上限だと考えているわけです。

分科会的(理事中心)か、諮問委員会的(非理事委員中心)か

委員会の性格を問う質問としては、「いつも理事長顔出してます?」が適当です。訊いてみると上の通り、委員会にでている人からみて、全く来ないか、必ずでているかで半々程度。

 

熱心な理事長さんからみると”完全な諮問委員会”で提案が理事会に来るだけでないと委員会全休は無理でしょうし、このパターンは理事会と委員会の対立構図(毎年代わる理事長と何年修繕委員長の喧嘩)も起こしやすい。

 

逆に沢山ある委員会で理事長(法人なら代表理事)が全てのヘッドを兼任しているのにも違和感は強い。同じ人が、党書記長と中央軍事委員長と国家主席とか役職を無数に兼任してるのは、大抵はやばい国で王様気取りの指導者の定番パターンです。独裁パターン(事実上全委員会を指揮)は私も2年ばかりやったことがありますが、例外的にタフな人でないと2年くらいで燃え尽きちゃいます。組織統制的には意味があるとは認めがたい。

 

なので私のお勧めとしては、委員会は理事・非理事半々程度を目指して両方の性格をもたせると共に、委員会のトップは副理事長として、さらに理事も一定数を配置する方法です。副理事長を理事会で解職してしまうと自動的に委員会トップを離れるので、理事長より威張ってる営繕委員長とかは出現しなくなります。

 

さらに委員会を無数に上げることもなくなって、理事長から見ると”任せておいて安心”な副理事長の数を超えない委員会しか常設設置できなくなります。うちは理事勤続10年とか2年目でも組織運営の経験のある人などで4人程度はコンスタントに理事長とは別にかくほできるので委員会の数は4つです。

非理事委員の設定

理事数に近いほどの理事ではない委員会委員を集めようとしたら、参加しやすい・責任は負わない・名前すらでてこないくらいの匿名性が必要じゃないかなと思います。

 

うちの今の営繕委員会は、持ってる資格の延べ数で建築士4・一級施工管理技士4・マンション管理士3とかの構成で、理事会から送り込まれる理事だけ数名は基本は資格なしとかプロで非理事中心の構成です今実働8人。よくそれだけプロ中心に集めたねとか言われるけど、大規模修繕の直前に10億円の工事をやるから建築プロ委員募集とかいって、高額報酬の建築プロが突然責任を背負う役職に手弁当で立候補してくるはずもなく(そうでなくてもプロの仕事を住民にただでやらせちゃいけません)、月1の委員会だけにプロだけど匿名的に・・・住民は名前すら知りません・・・参加してきたから”大規模修繕になっても抜けず”にやってくれたわけです。
 

専門委員会への理事と非理事の参加規定の比較

 上の表は、私のマンションで、“理事”として理事会・専門委員会に入る人と、“非理事”として専門委員会の委員のみに入る人の設定の差です。

 

できるだけ“差がつく”ように設定していて多くは専門委員会の運営細則に規定して「立場の直交性」を高めているわけですが、委員には委員会への出席義務規定はないので報酬対象は理事のみです。結果として同じ委員会に入るなら理事として入ったほうが有利とかなって、今期は15人の立候補者を輪番に優先採用しましたが委員→理事で残りがちなのはとりたてて問題とも思っていません。但し理事30人は多すぎなので2年くらいでちょっと工夫をいれようかなとは思ってます。

委員会ごとの“ノリ”の差と理事の適性

理事には人ごとに考え方の差や、適正などがあり、例えば維持管理や修繕など“建物”を相手にした分野と、防災や行事実施など“人間”相手の分野では向き不向きがある。

 

うちはもともと自治会が防災や行事も実施していたのを主管を理事会に移してきたので、防災・防犯や行事実施の部門はその流れで入って残っている人など、「自治会的」な考えの人が多い一方で、営繕委員会は、“人さえいなければ上手に管理できるんだけど(これは私)”みたいな建物愛の人が向いていたりする。無論私が皆さまの喜ぶ顔がみたくて行事頑張りますとか口にするはずもなく、適材適所ってあるわけです。

 

各々の適性に併せて適正のある部門に割り振ってあげると、割と委員会ごとに方針はそろっていてぶれないとかうまくいくことも多い。特に修繕などは、30人からの素人中心の理事会だけで工事仕様や会社を選定するのには無理があって、理事会からの参加者も含めてある程度プロよりの知識のある人でまとめないと、仕事がマンションの大規模修繕の現場監督って人(住民です)も、完全な一般ピープルも施工会社選定では同じ1票みたいなことが起こる。
 

相見積り規定を典型とした理事間の価値感の対立

積立金の運用の委員会や規約改定の委員会など高度な専門性を要する委員会では、素人を何人集めても意味はなく、それに適した専門性や経験をもった人の割合をあげないとうまくいきません。

 

上の図は、実際にありがちな典型的な理事会内の意見対立です。うちは営繕委員会は殆どプロですから、値段よりも工事仕様がしっかりしているかに拘りが強い。日常修繕でもこれじゃ長持ちしないでしょとか、大規模修繕だと次に工事するまでの期間が長くとれるなど、”見た目”や”値段”よりも、建物としての耐久性にこだわる委員が多くて、

管理会社がもってきた見積もりをもっと高額になる仕様でないとだめだで蹴ることも多い。

 

図でいうと素人中心に委員会を組むと水色の方向に、プロ中心にすると赤い方向によりやすいわけです。典型的なのが相見積もり規定で、うちのマンションは、日常修繕は管理会社への発注になる(相見積もりという概念がない)こともあって殆どの3桁万円までの工事は管理会社への特命発注(価格はプロが精査する)であって、一定額以下での相見積もりとりよせは無駄であるとして”禁止”です。

 

共用施設の委員会は、マナー違反を扱うので滞納者対応もカバー範囲です。委員会が、長期滞納の人に訴訟をして、勝訴したら競売で売ってでも回収しますとか報告をすると、もともと「ハートフル」「人間相手」の防災・行事の部門の人はそれはちょっと苛烈ではみたいなコメントをするおを理事会の場でみたりするので、結構分野に分かれて所属が決まっているのは大事かなと思っています。

 

ある程度長期に渡って”方向性”って一定でないと次どっちに進むんだとかなりがちなので、各委員会の委員長は数年は変わらない程度に経験の長い人が固定されていて、全部で5人いる10年の勤続表彰を受けた理事中4名が副理事長以上でどこかの会議のまとめ役をしています。
 

理事会の方向性にぶれがあると・・・ 


 
既に長いので”専門委員会”のお話はここまでにして、次回は「ザ・パークハウス本厚木タワー」の理事長さんがどう理事会の負荷低減をお考えかや、理事会の施策のスピードアップできた秘密をYouTubeのビデオ撮影でちょっと聞けたので、その爆速進化の秘密に迫れればと思います。

 

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