マンション管理

マンション管理の基礎は最初の5年間で作り上げた

今回BORDER5では「ザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンス」の理事長 牧内 真吾さんにマンション管理運営で力を入れていることについてお話を伺いました。特にマンション管理組合の運営で心がけていること、防災について力を入れていることについて興味深い話を伺うことができました。

マンション管理の基礎はメンテナンス&資金力と組合運営力

BORDER5:ザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンスはBORDER5の審査基準の各カテゴリーで満点評価ですが、特に意識されている分野はありますか?

 

牧内:4つのカテゴリーは並列ではなく、階層構造にあると捉えています。「メンテナンス&資金力」と「組合運営力」が基礎となり、その上に「防災力」や「コミュニティ&住心地力」があるというイメージです。

マンション管理・運営の基礎は最初の5年間で作り上げた

土屋:マンションを卓越した管理・運営されている理事長には、いくつかのタイプの方がいらっしゃいますよね。リーダーである理事長が管理組合をどう運営するかを考えたときに、理事長による強力なリーダーシップで運営するパターンもあれば、うまく仲間づくりをやっておられるパターンもあります。牧内さんの場合は、強いリーダーシップを発揮されて、そこから徐々に組織として動けるように変化をしている途中というように見ています。そこでお聞きしたいのが、牧内さんはザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンスの管理について、ご自身が理事会を離れても継続出来る形になれば身を引くお考えなのか、それともずっと何らかの形でマンション管理に関わるお考えなのか、どちらなのでしょうか。今の卓越したマンション管理を継続させるためのプランを伺いたいです。

 

牧内:これまでの運営はどちらかと言えば理事長が管理組合をリードしていくスタイルでした。特に当管理組合のような新築マンションでは、入居から数年以内の短期間に解決しなければならない課題がいくつか見込まれことから、ある程度はリーダーシップを発揮して決めていかないといけないと考えていました。第4期に修繕積立金の適正化と組織再編を行い、その時に自分の仕事は一定の区切りがついたと思っています。

 

現在は第6期ですが、第5期からは出来るだけ理事長の業務負担を軽くすることを意識してきました。今は誰が理事長になっても良いように、敢えて何もやらないで管理会社さんに任せてますね。

 

マンション竣工後、最初の5年間程度は基礎固めが重要で、絶対にやりきらないといけない課題があったんですが、それらの多くは解決できており、次の5年間程度は大きな課題がないと思っています。その間に出てくる諸々の課題は、時間をかけてじっくり解決出来れば良いかなと。そのぐらいの熱量でもマンションの管理・運営が回るように、これまでの5年間で管理規約・細則を整備してきました。

 

ルールは誰にとっても均しく共通なので、ルールさえきちんと整備しておけば、困ったときにルールに立ち帰ることができます。属人的に判断するのではなく、ルールに基づいて判断できる体制にしてきたのが私のやり方です。人と人の間でノウハウを共有していくことも大事なんですけど、役員の大半は1期2年で辞めてしまうのが実態です。マンション管理について何も分からない方が役員に就任されたとしても、最低限、後ろ向きに進まなければ良いわけで、少しでも前に進められるような運営をして頂ければ良いかなと思っています。

 

私がこのあとどうするかですが、基本的には理事長は辞める方向で考えています。

一人の人が理事長をやり続けることは、組織としてはかなり脆弱であると考えています。

 

組織としては、最低限のレベルで良いので長く管理を続けていけるような体制を作る。組織として無理をしない。そして、ある程度の新陳代謝があったほうがいい。基礎については頑張って作り上げたので、新しい皆さんで、その上を積み上げていって欲しいと思っています。

コロナ禍になってマンション管理組合が取り組んでいること

BORDER5:コロナ禍となって、何か新しく始めたことがあれば教えてください。

牧内:コロナ禍で集まって開催するイベントがなかなか難しいので、みんなが集まらないでできるコミュニティ活動が出来ないかどうか話しています。

 

土屋:コロナ禍による在宅でのリモートワークが増加したことで、ザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンスで、マンション管理組合として実施されたことはありますか?

 

牧内:コロナ禍でマンション内で在宅された方は増えました。ザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンスでは、朝の通勤時間帯にシャトルバスを運営しているのですが、(リモートワークなどの増加で)シャトルバスの乗車数が目に見えて減りました。

 

マンション内の共用部ではワークスペースとして平日に利用される方も増加しました。高層階のラウンジもこれまではグループ利用を想定した配置だったんですが、リモートワーク使いをする方のために単独席として使えるように配置を変えたりしています。たまたま共用部がリモートワークに適した形だったことも大きいと思います。

 

他にも在宅ワークが増えてきた影響がありました。ひとつはフィットネスルームです。家にずっととどまって仕事をする人が増えたので、体を動かすニーズが増えました。一方でフィットネスは感染対策も求められます。フィットネスの利用促進と感染対策、そしてマナーとの兼ね合いは、課題として考えています。

 

コロナ禍になって部屋で仕事をする人が増えた影響か、住民同士の騒音問題やタバコのニオイが気になる方が増加した側面はあります。この問題は専有部同士の問題である場合が多く、管理組合としてタッチできないところはあるんですが、騒音やタバコのニオイについては意見が多く出ています。在宅が増えたことで今まで見えていなかったことが顕在化するようになりました。

 

土屋:その問題はタワーマンションであっても他のマンションであっても、リモートワークの方々が増えたことで、竣工以来同じ音が続いていたはずの生活音が騒音の扱いになるケースは顕著にありますね。逆に言うと前と同じ生活をしているとトラブルになってしまう。私たちがかつて経験していなかった、掃除機をかける、洗濯機を使用するなどの音が聞こえているとか、今までも同じ音がしていたんですけど、コロナ禍になって騒音として扱われることに困惑されている方が多いですね。

 

牧内:そうだと思います。いろんな要素があると思います。コロナでも変わるし、築年数の経過でも変わるんですけど、世代も変わるしニーズも変わってくるものなので、住民のニーズが変わっていくなかで、管理組合は同じことばかりはしていられません。状況に合わせて上手く運営の状況を変えていけることがいいと思います。

 

土屋:BORDER5に登録されている他のタワーマンションの理事さんに話を伺ったときに、「稼げる管理組合」を目指している話があったんですが、マンション管理組合で稼ぐ方向で目指しているものはありますか?

 

牧内:既に実施した話となりますが、コロナ禍もあってキッチンカーをどこよりも早く導入しました。キッチンカーを導入したことは当時かなり話題になりましたね。収益を押し上げる要因にもなりました。労力に見合う収益源が外部にあるようであれば、マンション管理組合として積極的に採り入れていっても良いと考えています。

管理組合として力を入れている防災対策

BORDER5:防災についてマンションで手がけられていることを教えてください

 

牧内:ザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンスは東日本大震災後に販売開始になりました。そのため皆さん地震に対する怖さを理解して購入されているので防災意識は高いと思います。2021年に行った防災訓練は、コロナ禍もあってイベントはせずに安否確認のみを行ったんですが、在宅ワークをされている方も多かったためか、2020年は30%程度だった参加者も、2021年の防災訓練参加率は60%以上に上昇しました。

 

今後は、防災設備を紹介する動画を作成してみたいと思っています。動画を使うことで、今までと違う方法で防災に対する意識を啓蒙していきたいと考えています。

 

また、2019年のタワーマンション水没の災害を受けて、直後から地下施設の防水対策を検討しました。2021年に2000万円以上の費用をかけて、ザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンスの地下防水対策を完了させています。

 

たとえば、地下にある電気施設の入り口については、完全に水没しても耐えられるような、銀行の金庫並みの完全防水仕様の扉に替えました。これ以外にも何点か対策を取ることで、ずっと懸案事項だった地下の防水対策をやりきることが出来ました。

 

なお、2021年には防災対策として地下防水対策以外に備蓄品の買い替えや追加を実施しています。全体として防災対策に使った費用は4000万円ほどになりましたが、そのくらい防災対策には力を入れています。

計画を立て何が必要なのか道筋をつけていくことが大事

BORDER5:マンション管理組合として優先順位を意識して取り組むことが上手く、マンション管理組合を運営する秘訣だと思いました。

 

牧内:課題に優先順位をつけていくわけですが、課題の裏にはマンションに住んでいる住民がいることは忘れてはいけません。どんなに小さな課題でも住民にとっては切実な問題だったりもするので、住民のことは忘れてはいけないと思っています。その辺りをうまくバランス感覚を取りながらですね。

 

全体として最適な方向に導くなかで、割り切らないといけない部分もあります。会社とは違って理事会と管理会社でやらないといけないなかで、やれることは限られてますから、効率的に必要なことを順序立ててやっていくこと。計画を立て先々これをやるためには何が必要なのか道筋をつけていくことは大事です。

 

BORDER5:今日はすごく勉強になりました。ありがとうございました。

編集:BORDER5編集部
監修:さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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