コミュニティ

1000人以上のマンションコミュニティをまとめる秘訣とは?!

今回は、2021年3月にBORDER5に千葉県のマンションでは初掲載となった「ヴィルフォーレ稲毛」の理事長を務める千場清司さんにオンラインにてお話を伺いました。

 

総戸数660戸の大規模マンション群ならではのコミュニティづくりで意識していることについてなどソフト面に関する話と、竣工後30年が経過するヴィルフォーレ稲毛のハード面のメンテナンスについての考え方を中心にざっくばらんに語っていただきました。

 

「ヴィルフォーレ稲毛」は、JR総武本線「稲毛」駅からバスで17分あまりの少し郊外にあり、千葉市動物公園や広大な敷地のスポーツセンターが徒歩圏内にあり、また敷地の14%以上が緑豊かな植栽に囲まれたリゾート風大規模マンション群です。

管理組合のオリジナル番組をケーブルテレビで放送中

非常に興味深い取り組みとしてまず注目したことがあります。「ヴィルフォーレ稲毛」には、マンションの構内だけで放送しているケーブルテレビがあります。

そのケーブルテレビはVCT(ヴィルフォーレケーブルテレビジョンの略)といい、千場理事長が「ヴィルフォーレ稲毛」に93年に入居される1年前から、住民でもあった故西田氏が、おひとりで始められたものだったそうです。

 

そこに千場理事長が参加され、当初は2名で、後に有志を募って複数名で運営され、ケーブルテレビのなかでは住民参加型のコンテンツや、管理組合の重要な議案などについて24時間放送を行ってこられました。

 

今では、このメンバーも代替わりしましたが、現在も管理組合の傘下にあるVCT運営委員(3名)で継続しており、特に高齢者の皆さんに番組を見るだけで、いまマンションで何が問題で、何が話題なのか分かるような番組になっています。この番組はマンション群内の視聴率は良くて30%前後あるそうです。

マンションをソフト面とハード面で強化していく

BORDER5:いまヴィルフォーレ稲毛で一番力を入れていることは何ですか?

 

千場さん:マンションの修繕です。竣工してから30年経つと、マンションもあちこち修繕が必要になってきますので、そうした箇所を専門家に状態を見てもらって、ピンポイントで優先順位をつけて修繕をおこなっています。水回りなどに的を絞って大規模修繕を実施しています。今後、40年はマンションを持たせるために、こうした方針を区分所有者に説明会を開いて、計画を組み総会でも議決して取り組んでいます。雑排水管も毎年清掃を入れるようにするなど、かなり気を遣って取り組んでいます。

 

BORDER5:ありがとうございます。他にも注力していることはありますでしょうか?

 

千場さん:防災体制の再構築をいまやっています。「ヴィルフォーレ稲毛」は19年前に自治会を吸収して管理組合のなかに入れました。ただ10年前の東日本大震災のときは「ヴィルフォーレ稲毛」の防災体制は機能しませんでした。だからこれをもう一度機能するような体制構築を最優先の課題として取り組んでいます。その一環として当マンションの中心に位置する集会所建物は、千葉市の一時避難所として認定を受けることができました。今後は、これを契機に防災体制の中心的な部分として、機能するように準備をしてゆきたいと思っています。

 

現在「ヴィルフォーレ稲毛」のホームページも制作中です。先日β版が完成したのでこれからマンション内外への広報発信に動いていきます。マンションのハード面では大規模修繕や管理組合側の防災体制を、そしてソフト面として情報発信をちゃんと行う。これが現在注力していることになります。

東日本大震災を教訓に防災の取り組みに注力

BORDER5:ヴィルフォーレ稲毛での防災にかんする取り組みを教えてください。

 

千場さん:まだまだ防災の観点では、発想と視点を変えると、管理組合でやるべきことがたくさんあると感じています。マンションも30年も経つと一般的には資産価値の向上が期待できない面がありますが、このマンションは青函トンネル、黒部ダム、東京湾アクアライン、本州四国連絡橋などの数多くの国家事業に携わってきた佐藤工業が初めて建設した大型マンションで、その躯体は非常にしっかり建てられています。

 

構造的な不具合もほぼ皆無です。従って、これから40年もの間、快適に居住できるようにメンテナンスもしっかり行い、当然防災にもさらに力をいれていきます。実際に活動していることについては、素直にホームページやSNSなどを活用し外部の人にも情報を出します。さらには排水管のメンテナンスなど、ライフラインのボトルネックをチェックして、少しずつ手を入れ始めています。

 

BORDER5:ヴィルフォーレ稲毛は自治会を管理組合が吸収したと聞きました。

 

千場さん:はい。自治会を吸収したのは19年前で、発端は1年ほど前に「ヴィルフォーレ稲毛」の自治会加入率が50%を切ってしまったことでした。住んでいる方も子どもが大きくなると子ども会を抜ける方が増えたので、自治会も一緒に退会される方々が増えました。防災の観点で言うと、実は自治会が防災の窓口になっていました。

 

このまま行くと防災を担う自治会がまったく機能しないことを危惧した結果、管理組合が自治会を吸収しました。だから19年ほど前から「ヴィルフォーレ稲毛」には自治会はありません。その代わり防災部会を作り、自治会の活動も一部引き継いだものの、これまで防災活動にはあまり力を入れていませんでした。

 

「ヴィルフォーレ稲毛」の近くには小中学校があるんですが、そこでは「ヴィルフォーレ稲毛」居住者の人数をすべて収容はできません(居住者の約5%しか収容できない)。千葉市は避難所を増やす施策を行っており、集合住宅で集会所を持っているところは一時避難所として特別認定する制度があり、2021年にヴィルフォーレ稲毛も申請して認定されました。そのため現在はセンターハウスという集会所機能のある場所を、千葉市認定の一時避難所として用いることが出来るようになりました。防災体制を自助努力で出来る範囲のことを一歩ずつ行っています。

 

そして防災のところで、意外と盲点だったのが避難ルートでした。ベランダから逃げる場合、ベランダに階段がない居住者は防火扉を蹴破って、お隣側へ逃げるルートがあることを知らない人がほとんどでした。そのため避難ルートを貼り直しました。この話をすると、日頃から隣の方と仲良くしておく必要性を感じる方が多かったです。

ヴィルフォーレ稲毛の大きな資産となった住民のサークル活動

BORDER5:ヴィルフォーレ稲毛のマンションコミュニティについて教えてください。

 

千場さん:「ヴィルフォーレ稲毛」の統計データを取っているのですが、竣工当時に入居した皆さんは同じように年齢を重ねるので、高齢化は日本の縮図のように「ヴィルフォーレ稲毛」にもあります。住居を手放される方もいる一方で、若い子育世帯が入ってくる流れが大きく増えています。若い世代にも入っていただけるように設備の修繕は常時見ておく必要があります。

 

19年前に自治会を吸収した際、こども会があって自治会があったのですが無くなったので、逆に大人で時間のある方が、ボランティアで子どものために夏休みの早朝体操を企画されたり、防犯活動などもされています。いまはコロナ禍もあり規模を縮小していますが、高齢者と子育て世代の接点になるような七夕飾りの飾り付けをマンション内で行いました。

 

BORDER5:マンションのコミュニティをまとめるのは大変じゃないですか?

 

千場さん:ヴィルフォーレ稲毛は660世帯2000人弱の人がいるので、一度に集めて何かをやることは不可能なのです。19年前に自治会を吸収したときに、別のマンションで聞いた事例を参考に考えたのが、管理組合で補助金を出し(現在では補助金はその役割を終えており、支給していません)、仲間を集めてのサークル活動を推奨しました。そのサークル活動に参加されている方々を中心に防災のときは助け合う仕組みを作りました。

 

この活動はうまくいって、ヴィルフォーレ稲毛に住む皆さんがサークル活動を通して友人を作ることが出来ました。さすがに100~200人単位で仲良くなりましょうは難しいですが、10~20人単位での気心しれた仲間や顔見知りをいっぱい作っておくことがいいと思うのです。このサークル活動は横のつながりでのコミュニティづくりには一番いい方法だと思っています。何かあったときに声がけをするとすぐ集まることが出来るので大きな資産です。

 

【注記】

ヴィルフォーレ稲毛管理組合法人は、2019年までは設備管理の会計と、自治会機能の一部を引き継いだ自治防災会計の2つがあり、いずれも強制徴収していた。一方、管理組合は強制加入だが、この自治防災会計が自治活動を行う準自治会であり任意加入であるか否かで、原告区分所有者と管理組合間で係争になった。

 

一審は管理組合側の全面勝訴、二審は、原告の部分勝訴で、当該区分所有者の任意加入(或いは脱会)を認めるということで、自治会費の一部分(訴訟開始~結審までの期間)の返納という判決であった。

 

これらを受けて、2020年の第31期管理組合理事会では1年を通じて、判決内容を含めた詳細な検討を実施し、また弁護士にも相談した上で、新たな支出ルールを明記した管理規約に基づいた管理組合体制を再構築した。

 

それは、設備の修繕などを実施する組合管理会計とは別に存在した旧自治防災会計を廃止し、「環境防災会計」を新設し旧自治防災会計の残余財産を引き継いだ。 これにより、自治会が存在しないものの、その機能の本質である防災体制に限定して取り組めるように組織を再編し、加えて住民目線での住環境の向上を目指す方向性を明確にした。

 

言うなれば「設備=有形と、居住環境・住民活動=無形」の財産形成に資するように大幅な刷新を行った。今期32期は、この管理規約大幅改正後の初年度であり、昨今問われている大規模災害にいち早い体制確立を、中長期的視点で取り組もうとしている。

 

集会所のあるセンターハウスでは、最大約100名程度の収容が可能であり、地下には100KLの給水タンクが2基、更にディーゼル発電機による地下水組み上げポンプもあり、試験結果では地下水は飲料に適合している。まさに自助による防災の仕組みを持った稀有なマンションでもある。

知恵が多く集まることがマンション管理での利点にも

BORDER5:サークル活動を通したコミュニティづくりが非常に興味深かったです。

 

千場さん:30年前にヴィルフォーレ稲毛に入居された方は、現役を退かれている方も多いので、建設会社や電気会社のOBもいらっしゃり、管理組合を支援してくださる方が増えています。居住人数が多いだけにまとめるのは大変なのですけど、むしろエンサイクロペディアたる知恵を持つ方が多いのはヴィルフォーレ稲毛の利点だと思います。コロナが無事に収束すれば、餅つきなど皆さんが交流できるものも復活したいと考えています。

 

編集:BORDER5編集部
監修:さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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